住まいの機能と性能にちゃんと取り組もうと決めたのは、2011年3月11日の東日本大震災を目の当りにしてからです。
住まいは、人の身体の足りないところを補うように作られてきたと言われます。
寒さ暑さに始まり、雨や風、台風や地震といった自然の驚異から身を守るように、耐震性能や温熱環境(断熱性能)は住まいの最も大切な基本性能で、デザイン云々より優先すべきことだからです。
例えば「断熱」。室内で暖房した暖かさを外に逃がさない断熱という役割は“機能”、その熱を逃がさない性質をQ値(熱損失係数)のように1時間当たり熱が外に出ていく能力で示すのが“性能”になります。また、屋根のように、雨を家の中に入れない機能、夏の日差しを室内に入れない機能、外壁の劣化を防ぐ機能など複数の機能を持つものもあり、それぞれ屋根素材の違いによる耐久性能、軒の出の長さの違いによる日射遮蔽性能や外壁保護性能に差がでてくるように、それぞれの機能に対して性能もそれぞれ違いが出てきます。
さまざまな機能と性能のなかでも、構造性能や温熱環境性能、劣化の軽減性能などを、誰もが分かる共通のものさし(数値)で示し、住まいの性能をしっかり設計の中で確保していくことはとても大切だと考えています。 よく、「設計事務所の住まいは見た目のデザインはきれいだけれど、耐震性や断熱性はどうでしょうか」とか、「断熱材は□□がいいと聞きますが自由工房ではどんな断熱材を使用しますか」とか、「○○メーカーの△△構造が良いと聞きますが…」など質問されます。 構造や温熱環境性能は家ができてしまうと見えなくなってしまう部分で、専門用語で説明されて分かりにくいため、言われるままになってしまっている場合もあるのかもしれません。
私たちが気をつけているのは、「特別な材料や工法」や「性能の数値競争」に惑わされることなく、住まいの機能と性能を誰もが分かる共通のものさし(数値)で示し、住まいの強さや心地よさ、健康への配慮、耐久性などを確保していくことです。 つまり、目に見えなくなってしまいがちな住まいの機能と性能をしっかり把握して設計に活かしていくこと。あるいは住まい手の皆さんが、必要な性能と不必要な性能を選択していくことができるようにすることが、 価値ある住まいを担保していくことにつながっていくと考えています。なので、例えば、私たちが推奨している性能より高い性能にしていくことも可能ですし、逆にそこまで必要ないと判断してコストを下げていく対応も可能です。
なかでも、重視している性能は次の5つです。
構造(耐震)性能
温熱環境性能
空気環境性能
劣化軽減性能
標準性能・部材
構造、温熱環境、空気環境、劣化軽減の4つの性能は、住宅品格法の性能表示制度をベースにしています。
また、確保する性能レベルは、長期優良住宅の認定基準を基本と考えています。